鯱の会第1回定例会と新入会員オリエンテーション

2015.07.27

鯱の会第1回定例会「名古屋の伝統芸能の歴史にふれる」

 平成27年7月27日(月)鯱の会第1回定例会が、「名古屋の伝統芸能の歴史にふれる」を演題に名古屋能楽堂を会場に開催されました。参加者数は関心の高さを示し、93名でした。

 今回は「名古屋伝統文化を守る会」の豊島徳三氏のお力添えにより、東海学園大学教授の安田文吉教授(南山大学名誉教授)、能楽師狂言方野村又三郎師を迎え地元志向のご講演や実演をしていただきました。


 安田教授は、削りに削られた20分という講演時間を安田節全開、江戸の初対面の挨拶「おはようございます」に始まり猛スピードで進められました。

 すべて本物の金である鯱を頂く国宝第一号の名古屋城、神への通信手段としての櫓太鼓、神楽太鼓。太鼓を御神体とした神社名、神楽の舞の名手尾張芝主とトントンと話を進められ、駿府のお譲り品の75%がある、と尾張徳川家の話に至りました。


 名古屋は武家文化の中心地である。この事実を知ることが大事。蓬左文庫・徳川美術館を取り上げられました。

 初代藩主義直、鼓の名手、秀忠から送られた鼓が徳川美術館に所蔵されています。

 2代藩主光友、能の立ち方の名手、殿様が作り町人に管理を任せた中区橘町の芝居小屋で、能を賓客のリクエストに応じその場で50番〜100番ある演目から選ばれた能を家来だけで演じ得たとの記録あるそうです。そして第3代宗春は経済活動に力を入れました。

 平曲・筝曲の世界において、すべて古今和歌集の和歌を歌詞そのまま使った「古今組」はこの地で生まれたと興奮ぎみに語られました。

 最後に14世野村又三郎は父50歳のときの子であるが、先代はさる高名な能楽師より上手だったと私は思っている。上手い芸は観る人がきちんと検証(評価)しなければいけない。このことが大事であると力を込めて話されました。


 変わって野村又三郎師の講演内容は以下の通りでした。


 能舞台は同じく神に奉納する相撲の土俵と基本的に同じ構造で、屋根があり、柱がありました。土俵ではなぜ柱がなく釣天井になったかを話されました。

 能舞台前面に正面席(ファーストクラス)、脇席(ビジネス)、中正面席(エコノミー)の3種あります。中正面は目付柱が邪魔をします。そこで「通」は正面席と中正面席の境でお値打ちなエコノミー席を選択するとのことです。


 日本の芸能は神話にある天岩戸のアメノウズメのストリップを起源としており、原初的性格は神への奉納でした。一時イケメン写真集が話題になりましたが、古来も寺社が境内でステージを組み、美しい僧侶・神官が舞いました。現代の可愛い巫女の舞と同じです。人が大勢集まり、賽銭多く集まりました。宗教者は修行が第一ということで、それに代わって河原乞食等が日銭を稼ぐために舞台に上がるようになりました。

 観阿弥の子、世阿弥は12歳の美少年。足利義満15歳〜16歳が彼を寵愛し、そばに置くため当時猿楽・散楽と呼ばれていた能役者の地位を上げた。時を経て江戸幕末には、武士の公式の教養として保護されるに至りました。


 名古屋能楽堂といえば、後ろの鏡板に描かれた杉本健吉画伯の「若松」騒動顛末。これに関わり先代は引責辞任しました。従来寺社の境内に能舞台があり、板はなかったのですが、囃子方の反射板としてできた鏡板には慣例的に老松が描かれてきました。松は四季を通じて姿を変えないものとして神木とされてきました。老松は時を経ても変わらないですが、描かれた若松は季節が春に限定されます。演者は前を向いて演じ、後ろを振り向くと幹も枝もない若松が目に入るので落ち着かない。繁栄を象徴する老竹は若松との釣り合いから、現在描かれていません。


 仮面劇の能は迎合するところがない。字幕なしで「分かっているだろう」の世界。エコでリーズナブルと言えます。狂言も同じエコな芸能。狂言は立体落語の世界、後で思い出し笑いができるようなちょっとした教訓を含んだ普遍的な笑いを取り上げます。舞台での情報はすべてセリフで伝えます。(因みに「能楽」とは「能」と「狂言」を合わせた呼称。筆者)お座敷狂言もあり、どこでも出向く意向十分あります。


 今回実演の狂言は、予算に見合った小品「しびり」でした。親子共演、親の又三郎が主人を、子の信郎が太郎冠者(第一召使)を演じました。因みに「しびり」は「しびれる」の名詞形。太郎冠者の仮病「しびり」がコロっと落ちるまで、ヌケヌケとしたとぼけぶりが可笑しく、口元にこみ上げてくる笑いが所々で起こりました。


 懇親会場に移動してびっくりです。参加者でテーブルを埋め尽くしている。能楽堂では空き席もあったのですが、こんなに沢山の会員が参加していたとは、驚きました。さすが日本一、630席ある木曽の総檜造りの名古屋能楽堂の呑み込みぶりに感心しました。


(記事投稿:土屋範郎広報委員 写真:山本広報委員 )

新入会員オリエンテーション

 7月27日(月)名古屋能楽堂内 食事処「城」において、鯱の会として初の新入会員オリエンテーションが行われました。田中総務委員の司会により渡邊会長の「鯱の会をもっと良く知っていただき鯱の会ライフを楽しんでいただきたい」との挨拶の後、寺西副会長より鯱の会の設立経緯、生い立ちから25周年事業「若鯱大同窓会」を経て今日に至るまでの歴史説明があり、最後に新入会員の皆様に向けて「還暦を過ぎてもパシリ鯱の会」との川柳が送られました。後藤総務委員による活動目的および事業計画の説明と続き、慶弔規定の質疑応答があり、例会と共に研究会・サークルも積極的に参加してくださいとの要望にて、しっかりとしたオリエンテ−ションとなりました。

 

(記事投稿:山本完広報委員  写真:山本完広報委員 )

講演会

  • 渡辺事業委員長司会進行渡辺事業委員長司会進行
  • 渡邊会長の挨拶渡邊会長の挨拶
  • 豊嶋徳三氏豊島徳三氏
  • 東海学園大学教授の安田文吉氏のご講演東海学園大学教授の安田文吉氏のご講演
  • 名古屋能楽堂会場風景名古屋能楽堂会場風景
  • 能楽師狂言方野村又三郎氏のご講演能楽師狂言方野村又三郎氏のご講演
  • 野村又三郎親子による狂言しびり野村又三郎親子による狂言しびり
  • 狂言(しびり)風景狂言(しびり)風景
  • 棚橋副会長謝辞棚橋副会長謝辞

新入会員オリエンテーション

  • 司会進行役の田中総務委員司会進行役の田中総務委員
  • 渡辺会長の挨拶渡辺会長の挨拶
  • 副会長の挨拶副会長の挨拶
  • オリエンテーション風景オリエンテーション風景
  • オリエンテーション風景 (2)オリエンテーション風景 (2)

懇親会

  • 懇親会の様子司会の田中事業委員
  • 懇親会の様子懇親会開会宣言
  • 懇親会の様子豊島徳三氏乾杯のご発声
  • 懇親会の様子懇親会乾杯風景
  • 懇親会の様子講演会後の懇親会風景
  • 懇親会の様子ご歓談風景
  • 懇親会の様子下村事業委員による中締め挨拶
  • 懇親会の様子懇親会風景